2011年6月9日 福井新聞
県内の大学や短大、高専の8教育機関でつくる「県大学連携リーグ」は、地域医療の在り方を一般向けにまとめた「一歩先行き地域医療」を発行しました。医師不足など全国で進む医療崩壊を防ぐために住民?医療?行政の3位一体による協力関係が重要になるとし、現在の県内医療の問題点などを分かりやすく記しています。同リーグが昨年4月~8月に福井市内で県民向けに開いた地域医療講座(計6講座)を基に、最新資料を盛り込んだ上で加筆し、高浜町和田診療所の井階友貴医師(福井大医学部助教)が編集しました。6章構成で県内医療の現状や問題点?全国各地で医療崩壊がどのように進んでいるのか?千葉県東金市、兵庫県丹波市、長崎県平戸市の再生への取り組み―などを解説しました。福井大医学部プライマリケア講座の羽山貞宏講師は、県内医療の問題点を示しました。外来通院者数は全国平均の1.4倍に上回るデータを示し「福井県民は大病院志向が強いのが特徴だが、軽い症状の人が大病院に集中すると、重症患者に対応することができなくなる点が問題」と指摘しました。医師数の偏りが地域にどのような影響を与えるのか。井階医師は、自身が医療活動に取り組む高浜町を例に挙げ、住民理解が再生のカギを握ることを示しました。また、井階医師は「行政、大学、医療機関だけでは地域医療は維持できない」と訴え「住民自身が地域医療のことを考え行動することが不可欠」とします。例えばコンビニ受診や時間外受診を繰り返したり、研修医の診察に非協力な態度を取れば、医師や研修医は疲弊し、地域を去ってしまうことにもつながります。そのためにも「まずは自分の地域の医療に関心を持ち、十分に理解することからすべてが始まる。地域医療は住民?行政?医療者のチーム戦」(同医師)と訴えています。B6判、239ページ。600部発行、定価500円。県内主要書店で扱っています。