2011年8月14日 日刊県民福井新聞
福井大附属病院(永平寺町)が、院内のソフトウエアやデータなどを集中管理するシステムを構築し、今年4月から運用している。同病院によると、全国の病院で初の試み。東日本大震災の被災地ではカルテを消失して診療体制の再構築が遅れる問題も発生したが、同システムでは遠隔地で電子カルテなどのデータを保管するようにもできるため、防災などの観点で全国から注目されている。
企業などでも普及が進むクラウドコンピューティングと呼ばれるシステムで、同病院医療情報部によると、医療現場では病理や放射線など多岐にわたる部門の一元化に手間がかかることなどから敬遠されてきたという。
震災後のリスク回避手段として注目が集まり、導入に踏み切った同病院には6月ごろから全国の医療関係者が1か月当たり30~40人訪れている。同病院のシステムは外部のデータセンターなどは使わず病院敷地内に集約化しているが、医療情報部の山下芳範副部長は「データなどを(病院とは)違うところに置いておけるので、災害対応にも有効。視察後、早速導入を検討したいという関係者もいた」と話す。
また、医療業務面で「自由度が上がった」と山下副部長。各種ソフトウエアなどを集約したことで、例えば電子カルテのデータ閲覧に必要なソフトがコンピューター端末に備わっていなくてもよく「どんなメーカーのパソコンでも、携帯電話端末でも電子カルテを見ることができるようになる」という。
このため、医師が端末を持って患者を訪問して診療することも可能となり、山下部長は「普及すれば地域医療が変わると思う」と将来への期待を口にしていた。