2011年9月6日 福井新聞
県は5日、外部に放射能が漏れて住民避難が必要になるような原発事故が起きた際の医療体制を再検証する検討会を設置し、県庁で初会合を開いた。被ばくの有無を調べるスクリーニングを避難所で行う医師の確保や、嶺南の初期被ばく医療機関が機能不全に陥った場合の対応などが検討課題に挙げられた。年度内に県の緊急被ばく医療マニュアルを改定し、県原子力防災計画にも反映させる。
検討会は、東京電力福島第1原発事故に福島県など被災地で活動した県内の医師や福祉関係者ら10委員で構成。寺澤秀一福井大医学部教授が委員長に就いた。
福島の事故では発生翌日に住民の避難指示範囲が原発の半径20キロ圏内に広がり、圏内の初期被ばく医療機関4病院が機能を果たせなかった。事務局の報告では、避難した住民のスクリーニングは、ピーク時で42カ所で行われ、3月中だけで11万4千人を受け入れた。
現地で作業に加わった委員は、スクリーニングに従事すべき医師や保健師、看護師が被災し、他県からの応援も乏しかったと指摘。寺澤委員長は、県内でも専門知識を備えた医師が足りなくなるとして、「県外からの応援を呼べる協定を結ぶのが課題」と提起し、協定先は原発が立地する石川県が現実的だとした。
初期被ばく医療機関に指定されている嶺南の4病院が現在はいずれも原発の20キロ圏内にある点に関しては、初期支援機関の嶺北4病院の役割がポイントになるとの意見が出た。原発ごとに事故を想定しながら、機能を維持できる病院や、対策の拠点となるオフサイトセンターの課題洗い出しが必要とし、福島県で事故対応拠点となったJヴィレッジのような大規模施設の確保を求める意見もあった。
また、ヨウ素剤備蓄の対象範囲、避難指示区域の入院患者や福祉施設入所者の移送先、医薬品の確保なども課題に挙がった。
会合は計3回程度を予定し、次回は各課題について具体的に論議する。